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執筆者の写真katsuhiko Noguchi

加齢に伴う筋量の減少ならびに筋力の低下と筋細胞内水分量の関係



多くの先行研究によって加齢に伴い骨格筋量ならびに筋力が低下することが明らかにされており、また、筋力は筋横断面積に比例することが明らかにされていることから、加齢に伴う筋力の低下は骨格筋量の減少が要因であるとされていますが、筋力の低下が骨格筋量の減少よりも2倍~5倍大きいことも報告されており、近年では加齢に伴う筋力の低下は「骨格筋量の減少以外の要因」によるところが大きいとされ様々な研究が行われています。


ところで、骨格筋は単一の要素から成り立っている訳ではなく、骨格筋細胞、細胞外区画、筋内脂肪の3要素で構成されていると考えられていますが、これらの要素のうち力を発揮する要素は骨格筋細胞であることから考えれば、加齢によって筋力が低下する要因は単に骨格筋量の減少によるものではなく骨格筋細胞量の減少によるものであると考えられ、このことが加齢に伴う骨格筋量の減少よりも筋力の低下が著しい理由であるといえるかもしれません。


いい換えれば、加齢に伴う骨格筋量の減少を「見かけの減少」、骨格筋細胞量の減少を「真の減少」と捉えれば、加齢に伴う「見かけの減少」よりも「真の減少」が著しく、高齢者の骨格筋量を評価する上では骨格筋細胞量の減少、すなわち「真の減少」を推定することが重要であると考えられる訳です。


骨格筋細胞は水分を多く含むため骨格筋細胞内水分量を測定することで骨格筋細胞量を推定することが可能であると考えられますが、先行研究(1)において加齢に伴い骨格筋細胞内水分量が減少し、骨格筋細胞内水分量と筋力(等尺性膝伸展筋力)、パワー(垂直跳び)、機能的筋力(椅子からの立上り能力)との間に有意な相関関係がみられ、インピーダンス法によって骨格筋細胞内水分量を測定することで骨格筋細胞量を推定することが可能であり、加齢に伴い骨格筋細胞量が減少し筋力等の低下が生じることが示唆されています。


また、インピーダンス法によって四肢の骨格筋量を評価する際に細胞外水分量が骨格筋量の評価に影響を及ぼすこと、いい換えれば、高齢者の四肢の骨格筋量をインピーダンス法によって評価する際には細胞外水分量の影響によって過大評価してしまう可能性が示唆されています(1)。


これらのことから、高齢者においては骨格筋の「見かけの減少」より「真の減少」が著しく、「真の減少」の結果として筋力が低下し、高齢者の骨格筋量を評価する上では何より骨格筋細胞量を評価すべきであるといえます。


以上を踏まえ「加齢に伴う骨格筋細胞量の減少を如何に防ぐか」ということが高齢者の運動器における健康課題であるといっても過言ではなく、加齢に伴う骨格筋細胞量の減少が著しいという点から壮年期(厚労省の一部資料によると31~44歳)より骨格筋細胞量を維持するための運動を継続することが重要であるといえるでしょう。


(ちなみに、ランニング等の有酸素運動・持久系運動はサルコペニアおよびダイナペニアを十分に予防することは出来ないことが明らかにされている(2)ことから、壮年期から継続的なウエイトトレーニングに取り組む必要性があるといえるでしょう。)


●参考文献:

(1)Yamada Y, Schoeller DA, Nakamura E, Morimoto T, Kimura M, Oda S.:Extracellular water may mask actual muscle atrophy during aging.,J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2010 May;65(5):510-6.

(2)Marcell TJ, Hawkins SA, Wiswell RA.J:Leg strength declines with advancing age despite habitual endurance exercise in active older adults., Strength Cond Res. 2014 Feb;28(2):504-13

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